新年のご挨拶 あけましておめでとうございます。 昨年は3月頃から新型コロナウイルス感染症が拡大し、4月には緊急事態宣言が発令されるなど、今までにない大変な年でした。 今年の冬も第三波が到来し、私たちは熱やせきがでますと、新型コロナウイルスかインフルエンザか、あるいは風邪かどうかで戦々恐々としています。 ところで昨年9月に菅政権が発足しました。菅政権は「自助、共助、公助」を前面に押し出していますが、この考え方の根底には新自由主義の発想があるといえましょう。 新自由主義とは、市場原理主義を徹底し、本来は市場化すべきでない医療や社会保障分野など公共部門の規制をなくして民間企業の参入を認めるなど市場競争を持ち込む政策で、自己責任の政治・経済・財政運営で感染症や災害に極めて脆弱な社会となり格差が広がる社会になります。 現在新型コロナウイルス感染症により経済は最悪の状況になっていて、各種補助金や助成金が支給されています。 しかし新自由主義的発想によれば、新型コロナウイルス感染症の拡大とはいえ、それに対応できないような脆弱な企業に補助金や助成金などは出さないで、市場から退場させるべき、極論すればそのような中小零細企業は切り捨てるべきだという考えです。 すでに財務省は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で業績が悪化した中小企業に対する持続化給付金や家賃支援給付金などの支援策について、申請期限を迎える1月15日で終了させようとしています。 中小企業にとって、2019年10月の消費税率引き上げに加え新型コロナウイルス感染症の影響が、経営悪化のダブルパンチになっているのが実情で、新型コロナウイルス感染症の収束が長引くと、廃業の危機となる中小企業は31万社を超えるという民間調査会社の予測もでています。 日本の社会を支えているのは中小企業だということを忘れてはなりません。 私たちの命と暮らしを守るためには、新自由主義ではなく「公助」としての医療や社会保障を守り発展させる施策が必要です。 話は変わりますが、菅政権になってすぐに日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題が起こりました。 日本学術会議は、学問の自由の核心である専門分野の自律性を守る防波堤です。 私は大学で租税法を教えていたこともあり、学問の自由について関心を持っています。 学問の自由の背景にあるのは、古い話ですが1933年に京都帝国大学法学部の滝川(たきかわ)幸(ゆき)辰(とき)教授の書いた「刑法読本」の刑法学説が問題視されて文部省から休職処分を受け、これに抗議して法学部の教授陣も辞職して滝川教授ら約20名が大学を去った「滝川事件」が起こりました。また1935年には元東京帝大教授の美濃部達吉貴族院議員の著作が発禁処分になり、美濃部議員も公職から追放された「天皇機関説事件」など言論を弾圧する事件があり、そのような事件の後に、日本は戦争への道を突き進み、人々の自由さえ失われていったという苦い歴史があります。 法の趣旨を曲げた恣意的な人事介入で、学術会議の独立性や中立性を脅かすことは許されるものではありません。 新型コロナウイルス感染症がどの時点で収束に向かうのか分かりませんが、今年は衆議院総選挙がある年です。 今年はどういう年になるのか、またどういう年にしていくのか、私たちは日本の将来を見据えて判断し行動していく必要があります。 みなさまのご健勝と事業のご繁栄を祈念いたしまして、新年のご挨拶といたします。 本年もよろしくお願いいたします。 (代表社員税理士 益子良一)
2020年暑中お見舞い 2021/06/04 暑中お見舞い申し上げます。 3月頃から新型コロナウイルス感染症が拡大し4月には緊急事態宣言が発令されました。 新型コロナウイルス感染症の拡大で世界経済は1920年から30年代にかけて起きた大恐慌以来の最悪の経済危機に直面しています。 日本も経済産業省が5月29日に発表した4月の鉱工業生産指数の速報値は前月比9.1%低い87.1と3か月連続の下落となっていて、2013年以降で最低の水準となっています。また総務省の労働力調査によりますと、4月の完全失業者数は178万人と、前月から6万人増加し、さらに休業者数は348万人増の597万人となっていて、とくに正規雇用者の休業者は193万人と昨年12月の感染拡大前と比べて2.7倍なのに対し、非正規雇用者は300万人と4.3倍になっています。 企業活動の停滞や雇用情勢の悪化は、消費に影響し、経済産業省が発表した商業動態統計では、4月の小売業販売額が前年同月比13.7%減の10兆9290億円と,1980年1月以降2番目に大きい落ち込みとなっています。 日本が直面している消費不況の要因として、新型コロナウイルス感染症の拡大だけでなく、昨年10月からの消費税率引き上げも大きく影響しています。 2019年の成長率はIMF(国際通貨基金)の見通しで推計2.9%とリ−マンショックよりも悪い状況が世界的に起きていて、政府が作成する景気動向指数に基づく基調判断は「悪化」でした。 「景気が悪い時に消費税を引き上げてはならない」という鉄則を無視して増税に踏み切った結果、とてつもない消費減が起こりました。また中小企業の多くは、消費税の増税分を売値に転嫁できていません。 今後の日本経済がどうなっていくのか不透明な状態にあります。 自民党の若手議員らによる議員連盟「日本の未来を考える勉強会」は、3月11日に30兆円の補正予算を編成するとともに、消費税率を実質0%にして経済を立て直すべき、すなわち「消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目軽減税率を適用すること」という提言を、経済再生担当大臣に提出しています。 すでにドイツでは、新型コロナウィルス感染拡大で低迷した景気を刺激するために7月1日から日本の消費税に相当する付加価値税を半年間税率の引き下げを行っています。 日本の場合も、コロナ関連よる経営破綻が増加しつつある中、消費税税率を0パ−セントにするぐらいでないとインパクトがありませんし、経済を立て直す効果はないかもしれません。 ところで補正予算で成立した新型コロナウィルス感染で打撃を受けた中小企業は最大200万円、自営業者最大100万円の給付を受けられる持続化給付金を巡って不透明な動きがあります。 経済産業省(中小企業庁)は、その手続き業務を電通やパソナなどが関与して設立した民間一般社団法人に769億円で委託し、この団体は業務の大部分を電通に749億円で再委託し、電通はさらに再々委託しています。 その社団法人は実績がないと言われていますが、中抜きされた差額20億円はなにに使われるのでしょう。 国民の災難を食い物にするといっても過言ではありません。 改めて日本の将来について考えてみる必要があるといえましょう。 最後にご報告となりますが、私は今年(2020年)春の叙勲で、税理士功労として「旭日小綬章」を受章しました。 世の中、自分の予想しないようなことが起きるということを実感しています。 しかしこのような大変な時期に受章したのも何かの縁だと思います。 みなさまの事業の発展とご健勝を祈念いたしまして、暑中のごあいさつといたします。 (代表社員税理士 益子良一) |